抱っこで腰が重いときの原因の切り分け|道具の前に見るところ
抱っこで腰が重いときの原因の切り分け|道具の前に見るところ
毎日のことなので、なんとかしたい。ただ、ベルトやガードルを探し始める前に、腰にかかっている力そのものを減らせないでしょうか。
腰にかかる力は、抱く位置で大きく変わります。
同じ体重の子でも、体に密着させて抱くのと、腕を伸ばして前で抱えるのとでは、支えるために必要な力がまるで違うんです。
だから最初に見るのは、道具ではなく距離のほうなんです。
そしてもうひとつ、道具の前に外しておきたい状態があるんです。

工夫を試すより先に、受診したい状態
次のような症状があるなら、腰の使い方の話ではありません。
- お尻から脚のほうへ走る痛みや、しびれがある
- 足首や足の指に力が入りにくい
- 尿が出にくい、あるいは我慢しづらい
- じっとしていても痛い、夜中に痛みで目が覚める
- 熱がある、あるいは体重が落ちてきている
- 転んだり、ひねったりしたあとから痛みが出た
これらは整形外科で見てもらう対象でしょう。
とくに脚のしびれや力の入りにくさは、腰そのものより神経の側の話であることがあるんです。
産後で受診先に迷う場合は、まず産婦人科に相談して紹介してもらう形でも構いません。
抱っこで腰に来る仕組み
重いものを持つとき、体にかかる負担は重さだけでは決まりません。
体の中心からどれだけ離れた位置で支えているか、という距離のほうが大きく効いてきます。
腕を伸ばして前で抱えると、支点である腰から荷物までの距離が伸びるので、背中側の筋肉はその分だけ強く引っ張り返すことになるわけです。
つまり同じ子を抱いていても、位置しだいで腰にかかる力は変わってくるわけです。
そして育児では、この動作が一日に何十回もくり返されますよね。
一回あたりの差が小さくても、回数がかかると効いてくるのはこのためでしょう。
抱く位置を見直す
いちばん効くのは、体と子のあいだの隙間をなくすことです。
隙間があると距離が伸び、その分だけ腰の負担も増えていきます。
▶ 体と子のあいだに、こぶし1つ分以上の隙間がないか
▶ 腕だけで支えていないか(体幹に預ける位置へ寄せる)
▶ 骨盤を前に突き出して、お腹に乗せる形になっていないか
▶ いつも同じ側で抱いていないか
3つめは、疲れてくると自然に出てくる姿勢です。
お腹に乗せると腕はたしかに楽になりますが、そのぶん腰が反った状態で固定されてしまいます。
楽になった感覚と、負担が減ったという事実は、必ずしも一致しないところが厄介なんですよね。
4つめの左右の癖は、自分ではなかなか気づけません。
家族に見てもらうか、鏡の前で抱いてみると分かりやすいと思います。
意識して逆側を混ぜるだけでも、片側だけに集まっていた負担は散っていきます。
抱え上げる姿勢そのものは、厚生労働省が腰痛予防のポイントとして図つきで示しています。
抱っこ紐の調整でできること
抱っこ紐を使っていても腰が重いなら、調整の順番を疑ってみてください。
肩と腰のどちらで支えるかによって、負担のかかる場所が変わってきます。
- 腰ベルトを、骨盤の上のいちばん張っている位置に乗せる
- 腰ベルトをしっかり締めてから、子を入れる
- 肩ベルトは最後に、隙間がなくなるところまで引く
- 背中側のバックルを、肩甲骨のあたりまで上げる
- 子と自分のあいだに隙間が残っていないか、最後に確認する
順番を逆にして肩から締めると、重さが肩と首に集まってしまいます。
腰ベルトが下がっていると、骨盤ではなくお腹で受ける形になるので、これも腰に回ってきます。
調整は使うたびに変わるものなので、着けるたびに確認する習慣にしておくといいでしょう。
肩ベルトを先に締めて、腰ベルトをあとから合わせる
腰ベルトを、ウエストの細い位置で締める
背中のバックルが下がったまま、肩が外へ開いている
家族と共用していて、そのつど調整せずに使う
床からの抱き上げと、車での乗せ降ろし
腰に来る場面として見落とされやすいのが、抱き上げる瞬間のほうです。
床で遊んでいる子を持ち上げるとき、膝を伸ばしたまま腰から曲げると、距離が伸びた状態で持ち上げる形になってしまいます。
いったんしゃがんで、体に寄せてから立ち上がる。この2段階にするだけで、かかる力は変わってきます。
もうひとつ負担が集中しやすいのが、車のチャイルドシートです。
ドアの外から手を伸ばして、ひねりながら降ろす形になるので、距離とねじれが同時に加わる場面なんです。
座席に片膝を乗せて体を中へ入れてから抱えると、無理な姿勢を減らせますよ。
床から抱き上げるとき(膝を曲げず、腰から折っている)
車の乗せ降ろし(距離とねじれが重なる)
ベビーカーの積み下ろし(片手で持ち上げて、体をひねる)
抱いていない時間の姿勢
腰への負担は、抱いているあいだだけに生まれるわけではありません。
育児の一日を追っていくと、抱いていない時間にも同じ形の姿勢がくり返し出てきます。
- 授乳中に前かがみになり、その姿勢のまま20分ほど固まっている
- 床に座って世話をするとき、横座りや、背中を丸めたあぐらになっている
- 寝かしつけで、布団の横に中腰のまま止まる時間が長い
- ベビーカーやおむつ台の高さが合っておらず、毎回かがんでいる
1つめは、クッションで子の高さを作れば姿勢のほうを起こせます。
自分が子へ近づくのではなく、子を自分の高さまで持ち上げる。この向きに変えるだけで、背中の丸まり方が変わってくるはずです。
3つめの中腰は、いったん膝をついてしまうのがいちばん楽になりますよ。
家族で使い回すときの調整
抱っこ紐を家族で共用している場合、身長差の分だけ毎回ずれます。
ベルトの長さをそのつど合わせないと、どちらかが必ず合わない状態で使うことになってしまいます。
面倒でも、使う人が替わるたびに腰ベルトの位置から合わせ直してください。
分担そのものも、腰の観点では意味を持ちます。
同じ人が抱き続けると、回数が一方に寄ったまま積み上がっていきますよね。
「重い場面だけ替わる」という決め方でも、一日の総量はかなり変わってくると思います。
道具に期待していい範囲
骨盤ベルトや着圧のあるガードルは、外から支えるための道具です。
着けているあいだの安定を助ける位置にはありますが、痛みそのものを扱うものではありません。
腰に痛みが出ている段階で道具から入ると、原因のほうが置き去りになってしまいます。
順番としては、抱く位置と抱き上げ方を先に直す。
そのうえで、支えがあったほうが楽になる場面に絞って使う。この形が現実的だと思います。
一日中着けたままにしないこと、痛みやしびれが出たらやめること。この2つは共通の注意点でしょう。
サイズと強さの決め方は、着圧アイテムの選び方|サイズを下げてはいけない理由にまとめています。
よくある質問
抱っこ紐と、抱きひもだけの簡易なもので違いはありますか
腰ベルトがあるかどうかで、受ける場所が変わってきます。
短時間なら簡易なもので足りますが、長く抱く日は腰で受けられる形のほうが楽になるはずです。
おんぶのほうが腰にはいいのでしょうか
背中側で支えると体との距離が縮まるので、前抱きより負担が減る場面もあるでしょう。
ただ、乗せ降ろしの動作そのものに危なさがあるので、慣れるまでは低い姿勢でやってください。
腰が痛いときは、温めるのと冷やすのとどちらですか
ぶつけたあとの急な痛みは冷やす、慢性的な重さは温める、と案内されることが多いところです。
ただ判断に迷う痛みもあるので、続くようなら自己判断で決めずに受診してください。
マッサージや整体に行けば解決しますか
その場で軽くなることはあっても、抱き方が同じなら同じ負担がまた積み上がります。
受けること自体を否定はしませんが、動作のほうを変えないと同じところへ戻ってくるでしょう。
体幹を鍛えれば抱っこが楽になりますか
支える力が増えれば楽になる面はあります。
ただ、産後で腹直筋離開がある時期は、始める内容を確認してからにしてください。
子どもが大きくなれば自然に楽になりますか
体重は増えていくので、そこは楽にならない部分です。
抱く回数のほうは減っていくので、総量としては軽くなっていくと思います。
腰痛ベルトと骨盤ベルトは、同じものですか
当てる位置も、想定している場面も違う道具です。
骨盤ベルトは骨盤まわりを支えるもの、腰痛ベルトは腰そのものを固定する方向のもの、という分かれ方をしています。
どちらが合うかは状態しだいなので、痛みがあるなら受診の場で聞いてしまうのが早いでしょう。
妊娠中から腰が痛かった場合は、産後も続きますか
続く方もいれば、落ち着いていく方もいます。
ただ、妊娠前から痛みの下地があった場合は、産後の負担で表に出てきやすい面はあると思います。
授乳クッションは腰にも関係しますか
高さを作れる分だけ、前かがみの時間を減らせます。
腰のためというより姿勢のための道具として見ると、置き場所や高さの決め方が変わってくるでしょう。
一日に何回までなら抱いても平気ですか
回数で線を引ける種類の話ではありません。
同じ回数でも、抱く位置と抱き上げ方で積み上がる量が変わるので、そちらを先に見てください。
いつも同じ側で抱いてしまいます
利き手や、家事の動線の都合でそうなることが多いようです。
完全に半々にする必要はないので、意識できる場面だけ逆にするところから始めてみてください。
まとめ
抱っこで腰が重いとき、まず見るのは道具ではなく距離です。
体と子のあいだの隙間をなくし、抱き上げるときはしゃがんでから立つ。ここで負担はかなり変わってきます。
抱っこ紐なら、腰ベルトを先に締めてから肩を合わせる順番へ。
そして脚のしびれや力の入りにくさがあるなら、工夫を試す前に受診してください。
いま何が起きているかを整理したい場合は、産後の体は、何が戻って何が戻らないのか|時間の目安と受診の目安をどうぞ。
ガードルに期待していい範囲は、抱っこで腰が重いとき、ガードルに何を期待していいのか|順番から考えるに書いています。


