産後の体は、何が戻って何が戻らないのか|時間の目安と受診の目安

産後の体は、何が戻って何が戻らないのか|時間の目安と受診の目安

体重は少し戻ったのに、お腹まわりだけが戻らない。そこで焦る前に、いま体で何が起きていて、どこまでが時間の問題なのかを分けていきます。

産後の変化は、自然に戻るもの、時間をかけて戻るもの、そして形として残るものの3つに分かれます。
この3つを混ぜたまま「早く戻さなければ」と考えると、戻らない部分にまで力をかけることになってしまいます。
だから最初にやりたいのは、頑張ることではなく仕分けのほうなんです。
そしてもうひとつ、仕分けより先に外しておきたい変化があります。

子どもと過ごす日常のイメージ

体型の話より先に、相談したい変化

次のような状態があるなら、産婦人科に連絡してください。

  • 出血がいったん減ったのに、また増えた。鮮やかな赤い出血が続く
  • 熱が出た。悪寒がある
  • 帝王切開や会陰の傷の痛みが強くなった、赤みや膿がある
  • お腹の真ん中が縦に開いていて、力を入れると指が沈む
  • 尿がもれる、下のほうに何かが下りてくる感じがある
  • 気分の落ち込みや涙が止まらない状態が、2週間以上続いている

4つめは腹直筋離開と呼ばれる状態で、産後しばらく残る場合もあるんです。
この状態のまま腹筋を使う運動を始めると、かえって開きが目立つ方向へ進むことがあるんです。
自分で判断せず、まず見てもらってから運動の内容を決めるほうが安全でしょう。

産後の体で、いま起きていること

出産のあと、体はいくつもの調整を同時に進めている最中です。
大きくなった子宮が元の大きさへ戻り、妊娠中に増えていた血液量や水分量が落ち着いていく。
この過程だけで、産後の数週間はかなりの変化が起きているわけです。

それと並行して、妊娠中にゆるんでいた靭帯や関節も少しずつ安定へ向かいます。
ここは筋肉と違って自分で動かせる部分ではないので、時間のほうに任せる領域でしょう。
授乳をしている場合は、そこにエネルギーの消費も加わってきますよね。

産後の変化の仕分け方

産後によく気になる項目を、この3つに仕分けると、下の表のような形になってきます。

項目どう変わるか目安として言われる時間
子宮の大きさ元の大きさへ戻る数週間
体重(水分の分)比較的早く落ちる産後すぐ〜数週間
関節や靭帯のゆるみ時間をかけて安定する数か月
お腹の皮膚のたるみある程度は戻るが、完全には戻りにくい個人差が大きい
妊娠線色は薄くなるが、線そのものは残る色の変化に数か月以上
足のサイズや骨盤まわりの幅変わったまま落ち着くことがある戻らない場合もある

下の3つを「戻すべきもの」の枠に入れてしまうと、努力の行き先がなくなってしまいます。
一方で、上の3つは待っていれば進む部分です。
つまり自分で手を入れる価値があるのは、この表の外にある筋肉の使い方や姿勢のほうだと言えるでしょう。
産後の相談先そのものは、こども家庭庁の母子保健のページに事業として整理されています。

「骨盤が開く」という言い方の中身

骨盤は1枚の骨ではなく、いくつかの骨が靭帯でつながった構造です。
妊娠中はホルモンの働きで、そのつなぎ目がゆるみやすい状態へ向かっていきます。
産後はそこが時間をかけて安定へ向かう、というのが実際に起きていることです。

「開いた骨盤を閉じる」という言い方は広く使われていますが、扉のように開閉しているわけではありません。
ゆるんでいるつなぎ目が安定するまでのあいだ、外から支えておく。ガードルやベルトが担っているのは、この支えの部分でしょう。
支えることと、形を作り変えることは別の話だと考えています。

▶ 支える道具を使うときの前提
▶ 傷や出血の状態しだいなので、使い始める時期は医師や助産師に確認する
▶ 強く締めるほど効く、という道具ではない
▶ 一日中着けたままにせず、外す時間を作る
▶ 痛みやしびれ、食い込みが出たらその時点でやめる

支える道具と、体を使う動きの役割の違い

ガードルやベルトのような支える道具と、体を動かして働きを取り戻していくこと。
この2つは同じ方向を向いているように見えて、担っている役割は別のものなんです。

何をするものか期待していい範囲
支える道具外から支えて、安定するまでの時間を補う着けているあいだの支えと、服の見え方
体を使う動き使う機会を与えて、働きを取り戻していく時間はかかるが、外したあとにも残る

表にすると単純ですが、ここは混同されやすいところでもあります。
着けているあいだだけ細く見えることを、体そのものが変わったと受け取ってしまうと、外したときに落胆することになりますよね。
道具は道具として、時間を稼ぐために使う。そういう位置づけにしておくと、期待の置き方を間違えにくいでしょう。

体重と体型を、別々に見る

産後しばらくすると、体重は妊娠前に近づいたのにシルエットが違う、という時期が来ます。
これは同じ体重でも、筋肉の使い方と脂肪の付き方が変わっているためです。
とくにお腹まわりは、妊娠中に伸びていた部分がすぐには元の働きを取り戻さないので、支える力が落ちたところから始まるわけです。

ここで体重計の数字だけを見ていると、変化していないように感じてしまいますよね。
ウエストの実測や、着ていた服の入り方のほうを記録しておくと、動いている部分が見えてきます。
数字がひとつしかないと、それが動かない日に落ち込む理由も1つに絞られてしまうんです。

焦って始めると起きること

■ 産後に急ぎたくなったときの、危うい選択
出血が続いているうちに、強い運動や長時間の外出を組む
締め付けの強いものを、一日中着けたままにする
授乳中に食事の量を大きく減らす
腹直筋離開の確認をしないまま、腹筋を使う運動から始める

3つめは、体重を早く戻したい時期にいちばん起こりやすい選択だと思います。
授乳中はもともと必要な量が増えているので、そこを削ると回復のほうに響いてきます。
減らす方向で考えるより、抜けている食事の枠を埋めるほうを先にしてください。

何から手を付けるか

手を付ける順番を決めておくと、そのつど迷わずに済むはずです。

  1. 睡眠を確保する(まとまらないので、細切れでも合計を優先する)
  2. 抜けている食事の枠を埋める。減らす話はそのあと
  3. 呼吸と姿勢から始める。お腹を強く固めるより、息を吐ききる動きから
  4. 短い距離でいいので歩く。抱っこ紐でも構わない
  5. 1か月健診で、いつから何を始めていいかを確認する

5つめは、産後の相談の中でも聞き忘れやすい項目です。
運動の可否は傷の治り方や出血の状況で変わるので、その場で聞いてしまうのが早いでしょう。
聞きたいことをスマートフォンにメモしておくと、当日の慌ただしさの中でも取り出せますよ。

まわりの言葉との距離の取り方

産後は、体型についての言葉が驚くほど飛んでくる時期でもあります。
悪気のない「もう戻った?」が、いちばん刺さってしまうこともありますよね。
ここで比べる相手を増やしてしまうと、せっかくの仕分けが全部飛んでしまうでしょう。

対処としては、返す言葉を1つだけ用意しておくのが実際的だと思います。
「まだ途中です」で十分ですし、それ以上の説明を用意する義務は誰にもありません。
自分の体の状態を、人に説明できる形へ整えておく必要は、そもそもないんです。

よくある質問

いつから体型を戻す動きを始めていいですか

体の状態によって違うので、健診で確認してください。
一般には、悪露が落ち着いて傷の痛みがない段階から軽い動きへ、という進め方が案内されることが多いところです。

お腹のたるみは元に戻りますか

皮膚の戻り方には個人差があり、完全に元どおりとはいかない場合もあります。
ただ、支える筋肉の働きが戻ってくると見え方は変わってくるので、皮膚だけの話でもありません。

骨盤ベルトはいつまで着けるものですか

製品ごとに想定している時期が違うので、付属の説明を確認してください。
目的が支えることにある以上、ずっと着け続ける前提の道具ではないと考えています。

2人目のほうが戻りにくい気がします

出産の回数や間隔によって、条件そのものが変わってくるためです。
前回と同じ経過をたどるとはかぎらないので、前回を基準に焦らないほうがいいと思います。

足のサイズが変わったのですが、戻りますか

戻る方もいれば、そのまま落ち着く方もいるようです。
合わない靴を無理に履き続けると別の負担が出るので、そこは今のサイズに合わせてください。

体重が妊娠前より減らないまま1年たちました

授乳や睡眠の状況で、経過は大きく変わります。
気になるようなら、体重だけを目標にせず、健診や内科で一度相談してみるのがいいでしょう。

産後すぐに骨盤ベルトを着けたほうがいいですか

開始の時期は、出産の方法や傷の状態で変わってきます。
入院中であれば助産師に、退院後なら健診の場で聞いてしまうのが確実でしょう。

運動を始めたら、かえって腰が痛くなりました

いったん中止して、痛みが続くようなら受診してください。
産後は支える力が戻りきっていない時期なので、負荷のかけ方を変えたほうがいい場合があります。

妊娠線は目立たなくなりますか

時間とともに色は薄くなっていくと言われています。
ただ、線そのものは皮膚の変化なので、完全に元どおりというわけにはいかない場合が多いところです。
気になるようなら皮膚科で相談すると、扱える範囲を教えてもらえますよ。

周りと比べて戻りが遅い気がします

産後の経過は、出産の状況や体質、睡眠の取れ方でまったく違ってきます。
見えている範囲の情報だけで自分の速度を判定しても、あまり役に立たないと思いますよ。

まとめ

産後の体には、待てば戻る部分と、時間をかけて安定する部分と、形として残る部分があります。
混ぜたままにすると、戻らないところに力をかけて消耗することになってしまいます。
だから「戻す」ではなく「立て直す」。順番は、睡眠と食事が先で、体型はそのあとです。
そして気になる変化があるなら、体型の話より受診のほうが優先になります。

▶ 相談していいのか迷っている方へ
尿もれや痛みが続いている場合の相談先は、産後の「よくあること」と、相談していいサイン|どこへ持って行くかにまとめています。
▶ 骨盤ケアの道具を検討している方へ
ベルトとガードルの役割の違いは、骨盤ベルトとガードルは何が違うのか|用途で分けて、必要なほうを選ぶで整理しました。