睡眠の質を上げる生活習慣の基本
睡眠の質を上げる生活習慣の基本
就寝時刻は自分で選べませんが、起床時刻は選べます。まず朝を固定し、そのあとで夜を削っていくという順番でまとめました。
睡眠の質を上げようとするとき、いちばん効くのは夜の工夫ではなく、起きる時間を1つに固定することです。
理由は単純で、眠くなる時間は自分では決められないのに対して、起きる時間は目覚ましで決められるからなんです。
早く寝ようと努力しても眠れない時間が増えるだけですが、朝が固定されると、眠くなる時間のほうが後から寄ってきます。
寝る前のスマートフォンや入浴の時間もたしかに意味のある話ですが、順番としてはそのあとでしょう。
受診を検討したほうがいい状態
● 日中に強い眠気があり、生活に支障が出ている
● いびきや、睡眠中の呼吸について家族から指摘されたことがある
● 眠れない状態が数週間以上続いている
● 気分の落ち込みや不安が一緒にある
これらに当てはまる場合、生活習慣の工夫だけで解決しようとすると、かなりの時間を失うことになります。
睡眠は自己管理の問題として語られやすく、そのぶん受診が遅れやすい領域なんです。
先に医療機関で相談したほうが、結果として早いと思います。
当てはまらない方だけ、ここから先を読んでください。
固定するのは就寝ではなく起床
早く寝ようと努力したことがある方なら、それがうまくいかないことも知っているはずです。
眠くないのに横になっても眠れない時間が増えるだけですし、眠れなかったという記憶が翌日の不安になります。
代わりに、起きる時間のほうを固定してください。
平日も休日も、できるだけ同じ時刻に起きるようにします。
最初の数日はつらくなりますが、そのつらさは目的に沿ったものなので、そこで崩さないでほしいんです。
起床が固定されてくると、眠くなる時間のほうが後から寄ってきます。
眠くなる時間を先に決めようとするから、うまくいかないわけですね。
なお、勤務時間が日によって変わる方の場合、完全な固定は難しいと思います。
その場合は固定ではなく、ずれの幅を小さくすることを目標にしてください。
● 起床時刻を1つ決める(平日基準にする)
● 休日も、そこから2時間以上ずらさない
● 就寝時刻は決めない。眠くなったら寝る
● 眠れない夜があっても、翌朝の起床時刻は変えない
変えるのはこれだけです。夜の対策は、この1週間は何も足さないでください。

朝の光の役割
朝に光を浴びるとよい、という話はよく紹介されますよね。
これは気分の問題ではなく、体内時計の調整に関わるためだとされています。
大事なのは、やり方がとても具体的だという点です。
カーテンを開ける、窓際で朝食をとる、一駅分歩くといったことは、どれも新しい時間を作る必要がありません。
すでにやっていることの場所を変えるだけなので、続けやすさという意味では大きな利点だと思います。
曇りの日でも屋外の明るさは室内とは比べものにならないので、天気を理由にやめないでください。
そしてこれも、起床時刻の固定とセットで効いてきます。
起きる時間がばらばらなまま光を浴びても、調整の基準そのものが動いてしまうんです。
光と体内時計の関係は、厚生労働省の快眠と生活習慣にも同じ順序で説明があります。
休日の寝だめが効かない理由
平日の不足を休日にまとめて取り戻す、という考え方はうまくいきません。
休日に3時間長く寝ると、その日の夜に眠くなる時間が後ろへずれてしまいます。
すると月曜の朝はいつもより短い睡眠で起きることになり、その週の前半でまた不足が積み上がります。
この繰り返しが、多くの方が感じている「週明けがつらい」の正体でしょう。
休日にどうしても足りないと感じるなら、朝を延ばすのではなく、日中に短い仮眠を入れてください。
ただし夕方以降の仮眠は夜の眠気を削るので、そこは避けます。
寝だめは休んでいるようで、翌週の自分から借りているだけなんです。
夜にやることを削る順番
朝を1週間固定できたところで、はじめて夜に手をつけます。
ここでのコツは、足すのではなく削ることです。
寝る前に何かを新しく始めると、その時間の分だけ就寝が遅くなってしまいますよね。
削る候補のほうは、だいたい決まっています。
- 寝る直前の食事 ── 量より時間帯です。就寝直前を避けるだけで翌朝の感じ方が変わることがあります。
- 寝床でのスマートフォン ── 光の問題もありますが、それ以上に「続きが気になる」ことのほうが眠気を遠ざけます。
- 夕方以降のカフェイン ── 効き方には個人差があります。自分がどの程度影響を受けるかは、抜いてみないと分かりません。
- 就寝前の仕事のメール確認 ── 対応するかどうかにかかわらず、確認するだけで頭が動きます。
すべてを一度に削る必要はありません。
1つずつ抜いて、変化があるかどうかを見てみてください。
まとめて変えてしまうと、どれが効いたのか分からなくなります。
眠れない夜の過ごし方
寝つけないまま布団の中にいると、時間の感覚が引き延ばされます。
実際には20分でも、体感では1時間くらいに感じるものです。
そして「今日も眠れなかった」という記憶が残ります。
この記憶が厄介で、翌日の夜に「また眠れないかもしれない」という予測を連れてくるんです。
予測が緊張を生み、緊張が寝つきを遠ざけるという循環は、努力では止まりません。
ですから対策は、粘らないことに尽きます。
しばらく寝つけないと感じたら、一度布団から出てください。
照明を明るくしすぎない場所で刺激の少ないことをして過ごし、眠くなってから戻ります。
目的は、布団と「眠れない時間」を結びつけないことです。
布団は眠る場所であって、眠ろうと努力する場所ではありませんからね。
そして眠れない夜があっても、翌朝の起床時刻だけは変えないでください。
ここを崩すと、せっかく固定した基準のほうが動いてしまいます。
眠れなかった翌日は、日中の短い仮眠で補えば十分ですよ。
寝室で見るのは暗さと温度
寝室環境の話は、こだわり始めると際限がありません。
最初に見るのは、暗さと温度の2つだけで十分だと思います。
暗さについては、豆電球や電子機器の表示ランプが気になるなら、そこを覆うだけで済みます。
遮光カーテンを買う前に、部屋の中の小さな光を消してみてください。
温度は季節ごとに変わりますが、判断の目安は寝入りではなく明け方です。
寝る時点でちょうどよくても、明け方に冷え込めばそこで目が覚めますよね。
暖房を切って寝る習慣がある方は、切るタイミングのほうを見直してみてください。
夏は逆で、明け方に暑くて目が覚めることが多くなります。
どちらの季節も、寝入りではなく明け方に合わせるのが基本です。
運動は時間帯だけ
運動と睡眠の関係については、種目や強度の話が多く出てきます。
ただ、最初に気をつけるのは時間帯だけで構いません。
就寝の直前に強い運動をすると、体が活動する方向へ切り替わって、寝つきが遠のくことがあります。
逆にいえば、それ以外の時間帯なら種目は好みで選んで問題ないんです。
続けられるかどうかのほうが、種目の選択よりはるかに重要でしょう。
そして運動として時間を確保しようとすると、忙しい週に真っ先に消えます。
ですから、移動のほうへ組み込んでしまってください。
一駅分歩く、階段を使う、昼休みに外へ出るといったことなら、新しい時間を作る必要がありませんし、朝の光を浴びることとも両立します。
睡眠のために運動するというより、日中に体を動かす生活そのものが、夜の眠気につながっていきます。
効かない睡眠対策
● 早く寝ようと努力する ── 眠くない時間に横になっても、眠れない記憶が増えるだけです。
● 睡眠アプリのスコアを毎朝確認する ── 点数が悪い日に不安が増えると、それ自体が翌日の睡眠に影響します。
● 休日に寝だめする ── 翌週の自分から借りる行為です。
● 寝具を先に買い替える ── 起床時刻が動いている状態では、買い替えた効果を判定できません。
よくある質問
■ 起床時刻は何時に決めればいいですか
理想の時刻を探すより、平日に必要な時刻をそのまま基準にしてしまうほうが早いと思います。
何時が正解かではなく、毎日そこから動かさないことのほうが効くからです。
早起きにしたいのであれば、固定できてから15分ずつ動かしていくと崩れにくくなりますよ。
■ 昼寝はしてもいいですか
短い時間で、午後の早い時間帯であれば選択肢になります。
長くなると夜の眠気を削ってしまうので、夕方以降の仮眠は避けてください。
なお、毎日どうしても昼寝が必要な状態が続いているなら、夜の睡眠そのものを見直す合図でしょう。
■ 寝る前のスマートフォンは、なぜよくないのですか
画面の光の影響も指摘されますが、実際に響くのは内容のほうです。
続きが気になるものを見ると、そこで頭が動き始めてしまいますよね。
光だけが問題なら設定で対応できますが、内容の問題は設定では解決しません。
寝床に持ち込まないという配置の工夫のほうが確実です。
■ 週末しか長く寝られる日がありません
その場合は完全に固定するのではなく、ずれの幅を小さくすることを目標にしてください。
平日より2時間以上遅く起きるとその日の夜に響くので、1時間程度のずれに収めておくと週明けの負担が変わります。
足りないぶんは、日中の短い仮眠で補えば大丈夫です。
■ 睡眠時間は何時間必要ですか
必要な時間には個人差があるので、一律の正解はありません。
目安としては、日中に強い眠気がなく、休日も平日と同じくらいの時間で自然に目覚めるなら足りていると考えられます。
時間の数字を追うより、この2点で判断するほうが実態に合うと思います。
まとめ
睡眠の見直しは、夜ではなく朝から始めてください。
起床時刻を1つに固定すると、眠くなる時間のほうが後から寄ってきます。
休日の寝だめは、翌週の自分から借りているだけなので、足りないぶんは日中の短い仮眠で補います。
夜に手をつけるのは朝が固定できてからで、しかも足すのではなく削る方向で考えてください。
寝室で見るのは暗さと温度の2つだけ、しかも寝入りではなく明け方に合わせます。
細かいところに手を出す前に、まずこの順番だけ守ってみてほしいんです。


