東京へ移ると、収入と生活費はどう変わるか|上京前に出しておく差額

東京へ移ると、収入と生活費はどう変わるか|上京前に出しておく差額

比べるのは年収どうしではなく、手取りから動かせない支出を引いた残りのほうです。

東京へ移ると額面の年収は上がることが多い一方で、家賃も通勤にかかる費用も同時に上がります。
ですから増えるか減るかを知りたいなら、求人票の年収と今の年収を並べても答えは出ません。
見るべきなのは、毎月の手取りから、住居費のように減らしにくい支出を引いた残りのほうなんです。
この残りが増えるなら生活は今より楽になりますし、減るなら金額以外の理由で上京を選ぶことになるでしょう。
どちらでもかまわないと思います。
ただ、減ることを知らないまま移るのと、知ったうえで移るのとでは、後から効いてくるものがまるで違ってきます。

上がる費目と、ほとんど変わらない費目

生活費がまるごと高くなるようなイメージを持たれがちですが、実際に動くのは一部の費目だけです。
全国どこでもほぼ同じ価格のものと、地域で大きく差が出るものに分かれます。
費目ごとの地域差は総務省統計局の家計調査が都市別に集計しているので、感覚ではなく数字で当たれます。

費目東京へ移ったときの動き見積もりの手がかり
家賃いちばん大きく上がる。同じ間取りでも路線と駅からの距離で変わる勤務地が決まってから、通える範囲で実際の募集を見る
駐車場代車を持ち込むなら上がる。手放すならまるごとなくなる車を残すかどうかで正負が逆になる
通勤費距離は伸びるが、多くは会社が負担する求人票の通勤手当の欄で上限を確認する
食費自炊中心なら大きくは変わらない外食の頻度のほうが影響が大きい
水道光熱費ほとんど変わらない。むしろ部屋が狭くなると下がることもあるいまの請求額をそのまま使ってよい
通信費変わらない現在の契約をそのまま持ち込める

こうして分けてみると、差額のほとんどが住居まわりから出ていると分かってきます。
食費や光熱費まで含めて漠然と「東京は高い」と考えると、見積もりは大きく外れてしまうでしょう。
先に家賃と駐車場の2つだけを詰めれば、答えの半分以上は出ます。

上京後の収入と生活費を見積もる

額面ではなく、手取りで並べる

求人票に書かれているのは額面なので、そのまま比べると差額を多く見積もることになります。
額面が増えると、社会保険料も所得税も一緒に増えていくからです。
社会保険料は報酬の額に応じて決まりますし、所得税は所得が上がるほど高い税率の区分が使われます。
ですから手取りの増え方は、額面の増え方より必ず小さくなるんです。

もうひとつ、転職した年だけ事情が変わるものがあります。
住民税は前の年の所得に対してかかるので、上京した年に納めるのは、まだ地方で働いていたころの所得に基づく額です。
つまり収入が上がった実感より先に、税額のほうが遅れて追いかけてくる形なんです。
翌年に住民税が上がって驚く人がいるのは、この仕組みのせいでしょう。

▶ 手取りを知る、いちばん確実な方法
今の手取りは、給与明細の差引支給額を見れば分かります。
上京後の手取りは、内定後に受け取る労働条件通知書の金額から概算します。
求人票の段階では幅があるので、内定が出るまでは大まかな見当で十分です。
この2つの数字がそろってから、家賃を差し引いて比べてください。

車を手放せるかどうかで、差額はひっくり返る

地方から東京への転居で、いちばん金額が動くのは実は車かもしれません。
車を持っていると、駐車場代のほかに自動車税、任意保険、車検、燃料代がまとめてかかってきます。
これらは車を手放せば全部なくなるので、家賃の上昇分をかなりの部分まで打ち消してくれます。

逆に、車を残したまま東京で暮らすと差額はいちばん大きくなります。
駐車場代が地方の水準から跳ね上がるうえに、乗る回数が減っても維持費は同じだけ出ていくからです。
通勤も買い物も電車で済む場所に住むのであれば、車を残す理由は趣味か帰省くらいに絞られてくるでしょう。

ここは家族構成でも変わってきます。
小さな子どもがいる場合や、実家との行き来が多い場合は、手放したあとの不便のほうが大きくなるかもしれません。
金額だけで決めずに、月に何回乗っているかを先に数えてみてください。

通勤時間を、金額に置き換えてみる

家賃を抑えようとすると、勤務地から遠い場所を選ぶことになります。
ここで見落とされやすいのが、通勤時間そのものにも値段がついているという点です。

片道が30分伸びれば、往復で1日1時間、月に20日出社するなら20時間が通勤に消えます。
その20時間を、いまの時給に換算するといくらになるでしょうか。
家賃の差がその金額より小さいなら、遠い部屋を選ぶ意味はあまりないかもしれません。

在宅勤務の頻度も、この計算をひっくり返す要素です。
週に2日か3日しか出社しないのであれば、通勤時間の重みは半分近くまで下がります。
ですから物件を探す前に、出社の頻度を会社へ確認しておいたほうがいいと思います。

転居した年だけ、かかるもの

毎月の差額とは別に、最初の年にだけ出ていく費用があります。
ここを月々の家計に混ぜてしまうと、上京後の生活が実際より苦しく見えてしまうでしょう。

  • 物件の初期費用/敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・火災保険・保証会社の費用がまとめて出ます
  • 引っ越し費用/距離が長いぶん、同じ荷物量でも近距離の転居より高くなります
  • 家具と家電の買い替え/間取りが変わると、いま使っているものが入らないことがあります
  • 車を手放すときの手続き/売却で戻ってくる場合もあれば、抹消登録に費用がかかる場合もあります
  • 面接のための往復/内定前に発生するので、転居費用とは別に見ておく必要があります

これらは一度きりなので、毎月の差額と混ぜないほうが判断しやすいと思います。
初年度に必要なまとまった額と、毎月の収支は別の紙に書いてください。

▶ 初期費用の内訳と、資金の組み立て
いま挙げた一度きりの費用をもう少し細かく分けたものは上京にかかる費用と、転職・引っ越しの順番の考え方にあります。

差額を出す順番

必要な数字はそれほど多くありません。
順番どおりに埋めていけば、30分ほどで自分の差額が出ます。

  1. いまの手取りを給与明細で確認する
  2. いまの住居費(家賃・駐車場・共益費)を足す
  3. 手取りから住居費を引いて、現在の残りを出す
  4. 応募先の年収から上京後の手取りを概算する
  5. 通える範囲の家賃を、実際の募集から拾う
  6. 車を手放す前提で維持費を引く。残すなら駐車場代を足す
  7. 上京後の手取りから住居費を引いて、上京後の残りを出す
  8. 3と7を比べる
▶ この計算でいちばん外れやすいところ
5番の家賃です。
勤務地が決まる前に相場だけで置くと、通勤時間の条件が抜け落ちてしまいます。
内定が出て就業場所が確定してから、通勤時間の上限を決めたうえで実際の募集を見てください。
同じ家賃でも、路線が変われば通勤時間は倍近く違ってきます。
上京前に収支を書き出す

金額で決めなくていい場合

差額を出した結果、残る額が減ると分かることもあります。
それでも上京する判断は、十分ありえるでしょう。

いまの地域に自分の職種の求人がほとんどない場合、金額の比較そのものが成り立ちません。
数年後に就きたい仕事が決まっていて、その経験を積める会社が東京にしかないなら、これは将来の選択肢を買う支出です。
家族の事情や、通院・進学のように動かせない条件が先にある場合も同じだと思います。

ここで言いたいのは、金額で決めろということではありません。
減ると分かっていて選ぶのと、増えると思い込んだまま移るのとでは、生活が始まってからの落ち着きが違ってくるという話です。

判断を狂わせる、3つの見方

■ 差額の見積もりが大きく外れるとき
額面どうしを引き算する ── 手取りの増え方は額面より小さくなるので、差額を多く見積もります。
家賃を相場だけで置く ── 通勤時間の条件を入れないと、住めない場所の家賃で計算することになります。
初期費用を毎月の家計に混ぜる ── 一度きりの支出を12で割ると、上京後の暮らしが実際より苦しく見えます。

とくに1つ目は、上京してから気づく人が多いところでしょう。
年収が50万円上がっても、手元に増えるのはそれより少ない額です。
そのうえ家賃が月に3万円上がれば、年間では36万円の支出増になります。
この2つを別々に見ていると、増えたはずなのに楽にならない、という状態が起きてしまいます。

よくある質問

■ 家賃は、手取りの何割までに収めるべきですか

三分の一という目安がよく挙げられますが、これは地方の家賃を前提にした数字として広まったものです。
東京で同じ割合に収めようとすると、今度は通勤時間のほうが伸びすぎてしまうんです。
割合で決めるより、住居費を引いた残りがいくらになるかで判断したほうが実態に合うと思います。

■ 上京後の手取りは、いつ分かりますか

正確に分かるのは、内定後に労働条件通知書を受け取ってからです。
求人票の年収は幅で書かれていることが多く、賞与の扱いも会社によって違います。
それまでは大まかな見当で進めて、通知書が届いた時点で数字を入れ替えてください。

■ 車は、上京前に売ったほうがよいですか

転居の直前まで使うことを考えると、売却の手続きは転居日が決まってからで間に合います。
ただ、内定が出る前から相場だけは調べておくと、差額の計算に使えるでしょう。
引っ越し当日まで乗って、そのまま買い取りに出すという段取りにしている人もいます。

■ 実家暮らしから一人暮らしになる場合は、どう比べますか

この場合は上京の差額ではなく、一人暮らしを始める差額のほうが大きくなります。
家賃も光熱費も食費も、いまはゼロか一部負担のはずなので、比較の前提が変わってしまうんです。
東京とどこかを比べるのではなく、いまの生活と一人暮らしを比べたほうが実感に近づきます。

まとめ

東京へ移ったときに手元に残る額が増えるかどうかは、年収の差では決まりません。
手取りから住居費を引いた残りで比べて、はじめて答えが出ます。
動くのは主に住居まわりの費目で、食費や光熱費はそれほど変わりません。
そして車を手放せるかどうかで、差額は正にも負にもひっくり返ります。
初年度だけかかる費用は、毎月の家計と分けて置いてください。
計算した結果が減るほうに出ても、それで上京をやめる必要はないでしょう。
知らずに移るのと、知ったうえで移るのとで違ってくるのは、生活が始まってからの落ち着きのほうなんです。

▶ そもそも上京転職は難しいのか
選考で不利になるのかどうか、難易度がどこで決まるのかは地方から東京への転職は難しいのかで扱っています。