地方から東京への転職は難しいのか|落ちる理由と、分かれ目になる一点

地方から東京への転職は難しいのか|落ちる理由と、分かれ目になる一点

「難しい」という一語には、性質のまるで違う4つの話が混ざっています。

地方から東京への転職が難しいかどうかで言えば、選考そのものは難しくなりません。
書類に目を通す人も面接をする人も、応募者の現住所を減点の材料にはしていないからです。
難しくなるのは、選考の前後にぶら下がっている運用のほうなんです。
平日の日中に何度も時間を空けること、往復の費用を出し続けること、内定から入社までの短い期間に退職と転居を収めること。
この3つは在住地によってはっきり難易度が変わってきます。
ただし、選考そのもので不利になる場面がひとつだけあります。
入社できる日を答えられないときです。

「難しい」に混ざっている4つの話

上京転職を難しいと書いている記事はたくさんありますが、指しているものが記事ごとにばらばらです。
選考の話をしているものもあれば、上京後の生活の話をしているものもあるでしょう。
混ざったままだと、どこに手を打てばいいのかが決まりません。
まず4つに分けてしまうのが早いと思います。

難しいと言われるもの実際の難易度自分で動かせるか
選考の通過率住んでいる場所では変わらない動かす対象ではない
面接の日程調整高い。平日日中の枠を何度も作ることになる応募のまとめ方で下がる
往復の交通費中くらい。回数に比例して増えていく上京の回数で決まる
入社日までの段取り高い。退職と転居が重なってくる先に日付を決めれば下がる

表にしてみると、いちばん上の行だけが性質の違うものだと分かってきます。
ほかの3つは、自分の動き方しだいで難易度が上下します。
つまり「地方在住だから難しい」ではなく、「進め方によって難しくなる」というのが実際のところでしょう。

地方から東京への転職を検討する

企業が現住所を見ていない理由

採用する側が確認したいのは、入社日に通える場所にいるかどうか、その一点だけです。
いま住んでいる場所そのものには、ほとんど関心が向いていません。
採用は欠員や増員を埋めるために動いているので、判断の軸は「いつから戦力になるか」に置かれます。
居住地は、その答えを出すための材料でしかありません。

ですから、遠方からの応募であることを理由に書類が落ちることは、基本的にないと考えていいでしょう。
むしろ距離を越えて応募してきた人を、志望度が高いと受け取る担当者もいると思います。
ただし、これは有利になるという話ではないので気をつけてください。
有利でも不利でもなく、中立だという話です。

唯一、住んでいる場所で落ちる場面

例外はひとつだけあります。
面接で入社日を聞かれて、答えられなかったときなんです。
「内定が出てから考えます」と返してしまうと、企業側はその席がいつ埋まるかを読めなくなってしまいます。
読めない候補者は、落とされるのではなく保留されます。
そして保留されているあいだに、日付を答えられた別の候補者のほうで決まっていくでしょう。

これが厄介なのは、不採用の通知に理由が書かれない点だと思います。
落ちたのか、まだ選考中なのか、本人からは区別がつきません。
地方在住だから落ちた、と受け取ってしまう人が出てくるのは、たぶんここが原因なんです。

▶ 面接の前に、この一行だけ決めておく
「内定をいただけましたら、勤務地を確認したうえで◯月中に転居し、◯月◯日から勤務できます」
この形で答えられれば、居住地は判断材料から外れます。
転居の時期は正確でなくてかまいません。
月の単位で答えられるかどうかが分かれ目になります。

難易度の正体は、往復の回数

費用と有給が尽きるかどうかは、東京までの距離ではなく往復した回数で決まってきます。
そして往復の回数を決めているのは、実は応募の出し方のほうなんです。

上京の回数必要な有給交通費現実的かどうか
1回1日1往復分十分にありえる。1日に2社から3社を詰める形
2回2日2往復分標準的な範囲。多くの人がここに収まる
3回以上3日以上3往復分ここから急に苦しくなってくる

5社に1社ずつ応募して結果を待つ進め方だと、最終面接の時期がばらけて最大5往復になってしまいます。
同じ5社でも、応募の時期をそろえておけば1回か2回に収まるでしょう。
かかる費用が5倍違うわけですから、これはもう別の活動と言っていいと思います。
難易度が高いと感じている人の多くは、おそらく前者の進め方をとっているはずです。

▶ 日程をまとめる具体的な手順
1回の上京にどこまで詰め込めるか、企業へどう切り出すかは上京転職の面接・日程調整のコツで扱っています。

同じ地方在住でも、難易度が変わる分かれ目

ここまでを踏まえると、難易度を決めているのは住所ではなく段取りだと見えてきます。
同じ県に住んでいる2人でも、進め方が違えば負担はまるで変わってくるんです。

■ 難易度が下がる進め方
転居できる時期を先に決めている ── 面接で日付を答えられるので、選考が止まりません。
応募をまとめて出している ── 選考のペースがそろい、上京を1回か2回に絞れます。
一次をオンラインで受けられる企業を候補に入れている ── 有給の消費を終盤に回せます。
在職中に動いている ── 収入が途切れないぶん、往復の費用を出す判断がしやすくなります。
■ 難易度が上がる進め方
内定が出てから転居時期を考えようとしている ── 面接でいちばん重い質問に答えられません。
1社ずつ結果を待ってから次に応募している ── 上京の回数が、そのまま社数に近づいていきます。
選考が進んだ順に上京している ── 志望度の低い会社に、限られた往復を使ってしまいます。
退職してから活動を始めている ── 無収入のまま往復の費用と家賃を負担することになります。

とくに最後の1つは、効いてくる場面が多いように思います。
辞めてからのほうが時間を取れるのは確かなのですが、上京転職では時間より資金のほうが先に尽きるからです。
在職中に動けるのであれば、そちらを選んだほうが選択肢は広く保てるでしょう。

難しさを下げようとして、かえって上げてしまう手

不安を減らすために取った行動が、結果として難易度を押し上げてしまうことがあります。
よく見かけるのは次の4つでしょうか。

■ 狙いは正しいのに、逆に働くもの
先に上京してから探す ── 勤務地が決まらないまま家賃が発生し、活動できる期限が短くなります。
東京都内の求人だけに絞る ── 神奈川・埼玉・千葉の求人を外すと、母数がかなり減ってしまいます。
「地方在住でも大丈夫ですか」と最初に確認する ── 確認のつもりでも、判断を相手に預ける形になります。
通りやすそうな会社から受ける ── 限られた往復を、志望度の低い会社に使うことになります。

3つ目は意外に思われるかもしれません。
ただ、企業からすれば「大丈夫かどうか」は入社日で決まる話なので、そう聞かれても答えようがありません。
同じことを伝えるなら、面接に出られる曜日と転居できる時期を先に書いてしまうほうが早いでしょう。

職種と地域で、難易度は変わるのか

変わります。
ただし変わるのは選考の通過率ではなく、対面が必要になる回数のほうなんです。

仕事の内容を言葉で確認できる職種は、一次も二次もオンラインで進むことが多くなってきました。
一方で、現場や設備を見てもらう前提のある職種だと、早い段階で対面が入ってきます。
店舗や工場に配属される仕事の場合、職場を見ないまま入社するほうがお互いに危ないので、これは合理的な扱いだと思います。

地域のほうは、距離そのものより日帰りできるかどうかで負担が分かれてきます。
始発で出て最終で帰れるなら、宿泊費はかかりませんし有給も1日で済みます。
ここが前泊前提になると、1回あたりの費用がだいたい倍近くまで膨らんでいきます。
そもそもの求人の多さにも地域差があって、厚生労働省の一般職業紹介状況に都道府県ごとの数字が毎月出ています。

▶ 先に調べておくと、計画が具体的になるもの
自宅から最寄りの新幹線駅か空港までの所要時間。
始発で東京に着ける時刻と、最終で帰れる時刻。
その2つから逆算した、面接に出られる時間帯。
この3つが分かると、企業に出せる候補日が具体的になります。
上京しての面接に向かう
▶ 費用の見積もりと、転居の順番
往復にかかる分も含めた上京の費用と、転職と引っ越しのどちらを先にするかは上京にかかる費用と、転職・引っ越しの順番の考え方にまとめてあります。

よくある質問

■ 地方在住であることは、いつ伝えればよいですか

応募の時点で書いてしまうのが、いちばん進みが早いと思います。
隠しても住所欄で分かりますし、後から伝えると日程調整をやり直すことになってしまいます。
書き方は「遠方からの応募のため、面接は◯曜と◯曜の◯時以降を希望します」のように、事実と希望だけで足ります。

■ 内定が出る前に会社を辞めたほうが、動きやすいですか

時間の面では、確かに動きやすくなります。
ただ上京転職では、時間より先に資金のほうが尽きることが多いんです。
往復の交通費に加えて無収入の期間の生活費まで抱えることになるので、在職中に動けるならそちらを勧めます。

■ 何社くらい受けるのが現実的ですか

社数そのものより、応募の時期をそろえられるかどうかで決まってきます。
同じ時期に出せるなら5社でも6社でも1回の上京に収まりますが、ばらけると3社で3往復です。
まず往復にかけられる回数を決めて、そこから逆算するのが現実的でしょう。

■ 最終面接までオンラインで終わることはありますか

あります。
ただ、それを条件にして会社を絞ると候補がかなり減ってしまうので、狙って探すものではないと思います。
応募の段階で対面の有無を確認しておき、対面が入る会社は同じ週にまとめる、という組み方のほうが現実的でしょう。

まとめ

地方から東京への転職で難しいのは、選考ではなく運用のほうです。
書類も面接も、現住所そのものを見てはいません。
難易度を押し上げているのは、往復の回数と、入社日を答えられるかどうかの2点なんです。
応募をまとめて出せば往復は1回か2回に収まりますし、転居できる時期を先に決めておけば選考は止まりません。
逆に、1社ずつ結果を待って進み、内定が出てから転居を考えるつもりでいると、同じ活動が何倍にも重くなってしまいます。
難しいと言われている部分の多くは、住んでいる場所ではなく進め方のほうから来ているのでしょう。

▶ 準備から内定後の転居までの全体像
応募から退職・転居までを順番に並べたものは地方から東京へ転職する進め方にあります。